
絶大な人気を集める江戸時代の「奇想の絵師」伊藤若冲(じゃくちゅう)。その秘蔵作品がこの秋、ゆかりの京都で約10年ぶりに披露されます。若冲や作品の魅力を、京都・嵐山の福田美術館学芸課長、岡田秀之さんと語り合いました。
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若冲作品は、今年で62回目の「京都非公開文化財特別公開」(京都古文化保存協会主催、朝日新聞社特別協力)で会える。
最晩年に描いた草木の天井画
信行寺(京都市左京区)の本堂の天井には、最晩年の作品「花卉(かき)図」がある。
格(ごう)天井を埋める正方形の板167枚。丸い画面に牡丹(ぼたん)や菊、百合、さらに江戸期に伝来したばかりのヒマワリやサボテンなど約60種類の草木が描かれた。
見上げても花の区別がつきやすいように、赤や白といった明快な色づかいが特徴だ。一方で花のしべまで細密に表現され、「見えづらい部分まで細かく描くのが若冲の面白いところ」と岡田さんは指摘した。
画面に合わせて水仙の葉や梅の枝を曲げるなど、構図も工夫している。
菩提寺に伝わる雄鶏とドクロ
若冲の生家があった錦市場に近い宝蔵寺(京都市中京区)は、伊藤家の菩提(ぼだい)寺だ。両親らの墓があり、掛け軸の2作品が伝わる。
そのうち水墨画の「竹に雄鶏(ゆうけい)図」は、歴代住職が真筆かどうかを疑っていたが、調査した岡田さんが本物と鑑定した。
墨の濃淡を巧みに使い分け、墨と墨が接する部分に白い筋が生じる「筋目描(すじめが)き」など、若冲ならではの表現が随所に見られた。鶏の目は、見る人が座った時に同じ高さになるよう描かれているという。
一方の「髑髏(どくろ)図」は、黒い背景に白い髑髏が浮かぶ拓版画。禅に帰依した若冲が生死の問題に向き合ったのではないか、と岡田さんはみる。色鮮やかな30幅の花鳥図「動植綵絵(どうしょくさいえ)」(国宝)とは異なる一面を伝える。
没後200年の2000年、京都国立博物館の若冲展で火が付いたブームは、今も衰えを知らない。サロンでは、錦市場の青物問屋に生まれ、40歳から画業に専念した生涯も振り返った。

「年代によって作風を変えたことも魅力」と岡田さん。40、50代は動植綵絵をはじめとした極彩色の絵画や水墨画、その後は版画や石仏にも挑み、85歳で亡くなる直前まで描き続けた。
「今回の公開は、そんな若冲を直接感じられるいい機会です」。信行寺は9日まで、宝蔵寺は20~29日に公開される。

岡田秀之さん
おかだ・ひでゆき 大阪府堺市出身。2026年の「若冲にトリハダ!」展など、若冲や江戸絵画の展覧会を多数手がける。
参加者の感想から
●福岡県 60代女性 限られた時間内で、若冲の生涯と作品、絵の特徴など貴重な情報が伝わった。寺の動画は京都まで足を運べない者としては大変うれしく、天井画の1枚1枚の写真も現場では見えない細かい部分を見ることができた。訳もなく惹(ひ)かれる若冲の絵の魅力の源泉に触れることができた。
●大阪府 60代男性 進行のテンポが良く、わかりやすかった。作品画像や取材動画が効果的に使用され、理解を助けてくれた。寺が贋作(がんさく)だと思っていた作品が研究者視点で見れば間違いなく本物という件など、楽しく聞けた。
●東京都 60代女性 若冲のメインの紹介も興味深かったが、周辺情報(錦市場のシャッター絵など)が盛り込まれて面白かった。参加予定者から募った質問に答えていたのも、同じことを考えている人がいると共感を持てた。
●岩手県 70歳以上女性 若冲自身や作品の背景を知ることができてうれしい。岡田さんの話も興味深かった。
●奈良県 60代女性 新聞紙面も見ていたし、実際に京都に見に行きたいと思っている。記者サロン、初めてだったが、とてもよかった。
●東京都 60代女性 興味深い話で、何度も再生を止めてメモした。
●長野県 70歳以上女性 展覧会とは違った環境での若冲絵画の楽しみ方を教えてもらった。特別公開時は大混雑になるかと思うが、参加してみたくなった。
●東京都 60代男性 画像が美しく素晴らしい。信行寺、宝蔵寺の記者撮影のビデオは、自分も足を運びたいと思わされた。若冲の「果蔬(かそ)図巻」と「菜蟲譜(さいちゅうふ)」をデジタルで並べてもらい、共通点と差異がよく分かった。
●神奈川県 70歳以上女性 まだ見ていない作品がたくさん紹介され、晩年までの旺盛な活躍に感動した。ぜひ実際に観覧したいと思っている。
視聴案内 記者サロン「奇想の絵師・若冲に出会う」
2027年11月30日まで、紙面をご購読またはデジタル版の有料会員の方は何度でもご視聴いただけます。申し込みは募集ページ(https://t.asahi.com/wr7u)から。
